なにがし

写真が多いかも。と思ったら、パソコン・スマホとかデシタルネタばっか。

横浜駅SF読了。 

2018/03/21
Wed. 18:06

横浜駅SF読了。

ずっとどこかしら工事ばっかりしている横浜駅が自己増殖していくという、ジョークの効いた、荒唐無稽なアイデアからその前後の歴史的背景や技術的設定、さらに地理的条件が横浜駅の増殖に与える影響など様々な面から作品世界を練り上げて、その世界にリアリティを持たせることに成功している。

主人公がエキナカに入ってから甲府あたりまでの序盤は自己増殖した横浜駅内部の物珍しさもあって、情景を思い浮かべながら面白く一気に読めた。ちなみに私はイラストを担当している田中達之も好きでその絵も良かった。

クライマックスとなる42番出口の前後があっさりしすぎていて、もう少し緊迫感が欲しかった気もする。あと作者も認めているが、四国の辺りが椎名誠っぽいのがファンとしては嬉しいような、もっとオリジナリティが欲しいような複雑な気持ちだ。

九龍城や軍艦島やblameが好きな私みたいな人にはオススメできると思う。
これから全国版を読みます。
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本が、見つかった。 

2016/04/27
Wed. 21:41

何年か前に大量に捨てたつもりでいた本が、見つかった。

捨てたことは何となく覚えているが、いつどのくらいの本を捨てたのかよく覚えていない。
以前買った本が本棚に入っていないから、たしか捨てたんだろうなくらいの感覚だ。

断捨離とかそういうのの影響を受けたのかもしれないが、覚えていない。
おぼろげな記憶の中で、確かに小説を大量に捨てている。

高校時代から読んだ小説などがベッドの下の収納スペース半分くらいに
ぎっしり詰まっていた。それらをほぼ全てその時捨てていた。

読みたくなったらまた買えばいいし、一度読み終えた本を読み返したりしない。
そんな軽い気持ちだった。

その軽い気持ちが傲慢でしかなかったことを後に思い知ることになった。

また買えばいいと気楽に言えるほど金があるわけでもない。そもそも何だか昔より文庫本の値段が高い。それでも売っていればまだいい方で、出版不況だか何だか知らないが、絶版になっているのも一つや二つではなかった。断捨離とか言えるのはいつでも欲しいものが買える金持ちだけ。そういうことだ。

一度読んだ本は読み返さないという行為の根拠は、自分は一回読んだ本の内容はちゃんとわかっているし、それよりも一冊でも多くの本を読みたいからだ、と思っていた。
ところが、自分は本の内容が一回読んだくらいでわかるほど頭の良いわけでもなく、もちろん内容もさっぱり頭に入っていない、一冊でも多くの本を読みたいのもただそのほうがなんか頭がよく見えるという虚栄心からだ、という自分には都合の悪い事実を受け入れざるを得なくなった。

それを受け入れて初めて、自分の今までしてきた読書という行為のなんと空虚なことかと、絶望した。

それからはそれまでの字面を追うばかりの読書をやめて、しっかりと情景を思い浮かべ、ストーリーがわからなくなれば少し前を読み返して、としっかりと読書をするように心がけてきた。

そして自分の身の丈というものを実感した。
自分は自分が思っていたほど頭が良いわけではない。
それは私にとって自分の中身がほとんど空っぽになってしまうくらいの事実だった。

そんな時、ダンボール箱いくつかに分けて捨てたはずの本のうち、一箱が見つかった。
それは今日の昼間家を片付けていた時のことだった。春の暖かな日が家の中に差し込んできて、荷物をいくつも上げ下げしていた私の体をよけいに熱くさせていた。

その箱の中には、学生時代読んだ本の一部がつまっていた。学生時代の一部と言ってもよかった。戦争物、つげ義春、横溝正史、江戸川乱歩、宮本輝、などなど。内容どころか読んだことすら忘れていた。いや、読んですらいなかったのかもしれない。

今度こそ読もう。
そう思い、一冊の本を手に取った。

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「ジョーカーゲーム」読了。 

2015/08/29
Sat. 19:47

なんか映画化されてるみたいで、知ってる人結構いそうです。
陸軍中野学校をモデルにした特務機関「D機関」を舞台にしたスパイ小説。

東大卒を始めとしたエリートの中から
面接会場までの歩数や窓の数を聞くなどのかなり難易度の高い変なテストで選抜して
本物の泥棒が鍵の開け方を教えたり一般人には想像もつかない訓練をする。

こんな特殊な人間の集まった特務機関の話しなので、
007みたいに派手な大きな物語が始まるかとおもいきや、
小さく地味な短編がいくつか集まっている。

私にはこのくらい地味な方が性に合ってるし
小説内の記述を見ても実際のスパイもこのくらい地味な活動の集積らしいが
フィクションなんだからもうちょっと派手な事してもいいのでは、と思った。

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ちょっと前によく見たTVのCM。
若い落語家が師匠の落語を見た時の衝撃を語っていた。

目の前に噺の中の情景がまざまざと現れ、
終わった時体がしびれて、立ち上がれなかった。

大げさだな、と思った。
講談師見てきたように嘘をつき。
師匠のことだからと大げさに言ってるんだな、と思った。

その時は。


なにがし  「イリヤの空、UFOの夏」についての感想。

私は小説を小学生の頃からよく読んでいた。
推理小説、SF、ホラー、純文学、などなど。
常に読みかけの本がカバンの中に入っていて、
息をするように本を読んでいた。
さらっと読んではすぐ次の本へ。
読み返しもしない。
私にとって読書とはそういうものだったし、
誰にとってもそういうものだと思っていた。

そうやって息をするように読むつもりで
「イリヤの空、UFOの夏」も
カバンの中に入れた。

最初のうちはなかなかうまいな、くらいの気持ちだった。
その後は上記リンク先の引用。

それがどんどん引き込まれていって、その3あたりから次の章が待ちきれなくなった。
その4では後の展開が気が気でなくて、本当に待ちきれなくて一日で一気に読み終えた。
元々は連載だったらしいが、続きを次の号が発売されるまで待たねばならなかったなどと考えるだけで恐ろしい。

読み終えた後、次の日まで頭の中は園原にあって、伊里野のことを考えていた。
その日は仕事にならなかった。

と、作者に頭を掴まれて思いっきり物語の中に
引きずり込まれたような没入の仕方だった。

それから小説の読み方が変わった。
というか、読んでいる時の頭の使い方が変わった。
内容が以前より頭に入るようになったし、
小説の中の描写が光景として浮かび上がってくるようになった。

冒頭に書いた若い落語家の言っていたことも
もしかしたら本当のことかもしれない。そう思った。
目の前に噺の中の情景がまざまざと現れ、終わった時体がしびれて、立ち上がれなかった。
落語にも私の分からないようなそんなすごい力があるのかもしれない。

小説の話に戻ると、
さらにその後こう書いた。

これが小説のもつ力なのか、「イリヤの空、UFOの夏」だからか、秋山瑞人だからか、ライトノベルだからか、小説だからか、どれだかわからない。ライトノベルだと敬遠していたのが悔やまれる。

今改めて思い返してみると、
あれは「小説」の持つ本来の力だったような気がする。
それまで様々な小説を軽く読み飛ばしてきた私に、
作者がその凄まじい腕力で小説の持つ力を
まざまざと見せつけてくれたように思う。
そのことに感謝したい。


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「イリヤの空、UFOの夏」についての感想。 

2014/12/11
Thu. 20:30

ライトノベルというジャンルを読むのはこれがほとんど初めてだが、
その他の小説を含めてもここまで感情移入できたのは初めてだ。
感情移入とはこういうものなのか、ここまで凄まじいものなのかと実感した。

最初のプールのあたりとか映画館のくだりなどは
ライトノベルってこんなもんなのか、くらいの感想だった。
ストーリーの切り替えのタイミングが上手いなと感じた。
会社の帰りに一日一章くらいのペースで読み進めていった。


イリヤの空、UFOの夏〈その1〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その1〉 (電撃文庫)
(2001/10)
秋山 瑞人

商品詳細を見る


それがどんどん引き込まれていって、その3あたりから次の章が待ちきれなくなった。
その4では後の展開が気が気でなくて、本当に待ちきれなくて一日で一気に読み終えた。
元々は連載だったらしいが、続きを次の号が発売されるまで待たねばならなかったなどと考えるだけで恐ろしい。

読み終えた後、次の日まで頭の中は園原にあって、伊里野のことを考えていた。
その日は仕事にならなかった。

これが小説のもつ力なのか、「イリヤの空、UFOの夏」だからか、秋山瑞人だからか、ライトノベルだからか、小説だからか、どれだかわからない。ライトノベルだと敬遠していたのが悔やまれる。

旭日祭。オタク向けに体育会系の影を薄くしていると感じた。旭日会も「体育」会系ではないし。
あと、企画一つ一つのアイデアが手が込んでいる。全編に言えることだが、脇役までちゃんと描写されているし、こうした細部までしっかり作りこまれている。サバイバルスタンプラリーなどこのアイデアだけで短編一つ書けそうなくらいだ。神は細部に宿る。


イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 (電撃文庫)
(2001/11)
秋山 瑞人

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無銭飲食列伝。作者の語彙力、表現力、文章力を見せつけられた。60分で完食したらタダという特殊な食事ではあるが、食べるという行為にこれほどの意味・行動・心理の変化が込められている事を初めて実感した。
そして最後に、死亡フラグが立った。
いや、「死亡フラグ」などという冷笑的表現はしたくない。
死なないでほしい、この関係がずっと続いてほしいと切に願っていた。
本来「死亡フラグ」と呼ばれる表現手法はこのように読者に登場人物に対して感情移入を強烈に促すものであるということを初めて知った。

水前寺応答せよ。謎の事故、警戒態勢、休校と日常が侵食されていく様子が静かに描かれている。世の中は蜂の巣をひっくり返したみたいに騒がしいが、中学生の浅羽たちは閑散とした校内で形ばかりの授業を受け、疎開して生活の気配の消えた町を歩く。その静けさは気味悪くってその後の急展開の前の、嵐の前の静けさのようだった。

伊里野が吐血して倒れた後、浅羽は、伊里野がブラックマンタのパイロットとして敵と戦っていてそのために伊里野の心身に重すぎる負担がかかっていることを確信する。
そして、椎名真由美に言う。

そんなの大人がやれよ!! 中学生の女の子にぜんぶおっかぶせてよく平気でいられるな! あんたらが勝手に始めた戦争だろ!


それを聞いた椎名真由美は浅羽に頭突きをかまし、殴りながらこう答える。

脳グソかっぽじってよく聞きなさいよ、この世にタダの物なんて何一つないの。この戦争はね、あんたがエロ本片手にチンポしごいたりUFO特番見てゲラゲラ笑ったりする時間を稼ぎ続けるための戦争なのよ!


このやりとりでこの小説は深みを増したと思う。資本主義と民主主義を掲げる現代社会の複雑さが国家、軍隊、大人=悪という単純な図式を超えてこの返答に集約されている。


イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 (電撃文庫)
(2002/09)
秋山 瑞人

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そして、逃避行。最初は順調に見えた逃避行だが、二人が心身ともにボロボロになっていくのがひたすらに切ない。ホームレスの吉野が伊里野に暴行する、同時刻に干からびたエロ本でオナニーする浅羽。この対比が浅羽の無力さを感じさせた。

逃避行の最後、以前から度々登場するが屋根の上の榎本がかっこいい。
そのかっこよさの理由が最後の最後にエピローグの中に集約されて出てくる。

命を賭して守るだけの価値がこの世界にはあるのだと心底から信じて、故にそれを伊里野に知らせることを恐れず、その罪をすべて我が身に引き受けて地獄に落ちる覚悟を決めていたのは、榎本だけだったように思うのです。



イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 (電撃文庫)
(2003/08)
秋山 瑞人

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私はといえば、榎本のようになりたいと思いつつ、吉野にならないようにするだけで精一杯だったりする。でも、吉野も心に残る脇役だな。

坂道を逃げていく吉野。
屋根の上で空を見上げる榎本。
六番山の上空でマイムマイムを踊るブラックマンタ。
この小説の中の、いくつもの光景が今でも頭の中に浮かんでは消える。

これで「イリヤの空、UFOの夏」の感想は終わり。
この文章をブログに上げればこの4冊の文庫本はやっとこさ本棚にしまわれる。
なんか肩の荷が下りた感じがする。

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