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「イリヤの空、UFOの夏」についての感想。 

2014/12/11
Thu. 20:30

ライトノベルというジャンルを読むのはこれがほとんど初めてだが、
その他の小説を含めてもここまで感情移入できたのは初めてだ。
感情移入とはこういうものなのか、ここまで凄まじいものなのかと実感した。

最初のプールのあたりとか映画館のくだりなどは
ライトノベルってこんなもんなのか、くらいの感想だった。
ストーリーの切り替えのタイミングが上手いなと感じた。
会社の帰りに一日一章くらいのペースで読み進めていった。


イリヤの空、UFOの夏〈その1〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その1〉 (電撃文庫)
(2001/10)
秋山 瑞人

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それがどんどん引き込まれていって、その3あたりから次の章が待ちきれなくなった。
その4では後の展開が気が気でなくて、本当に待ちきれなくて一日で一気に読み終えた。
元々は連載だったらしいが、続きを次の号が発売されるまで待たねばならなかったなどと考えるだけで恐ろしい。

読み終えた後、次の日まで頭の中は園原にあって、伊里野のことを考えていた。
その日は仕事にならなかった。

これが小説のもつ力なのか、「イリヤの空、UFOの夏」だからか、秋山瑞人だからか、ライトノベルだからか、小説だからか、どれだかわからない。ライトノベルだと敬遠していたのが悔やまれる。

旭日祭。オタク向けに体育会系の影を薄くしていると感じた。旭日会も「体育」会系ではないし。
あと、企画一つ一つのアイデアが手が込んでいる。全編に言えることだが、脇役までちゃんと描写されているし、こうした細部までしっかり作りこまれている。サバイバルスタンプラリーなどこのアイデアだけで短編一つ書けそうなくらいだ。神は細部に宿る。


イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 (電撃文庫)
(2001/11)
秋山 瑞人

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無銭飲食列伝。作者の語彙力、表現力、文章力を見せつけられた。60分で完食したらタダという特殊な食事ではあるが、食べるという行為にこれほどの意味・行動・心理の変化が込められている事を初めて実感した。
そして最後に、死亡フラグが立った。
いや、「死亡フラグ」などという冷笑的表現はしたくない。
死なないでほしい、この関係がずっと続いてほしいと切に願っていた。
本来「死亡フラグ」と呼ばれる表現手法はこのように読者に登場人物に対して感情移入を強烈に促すものであるということを初めて知った。

水前寺応答せよ。謎の事故、警戒態勢、休校と日常が侵食されていく様子が静かに描かれている。世の中は蜂の巣をひっくり返したみたいに騒がしいが、中学生の浅羽たちは閑散とした校内で形ばかりの授業を受け、疎開して生活の気配の消えた町を歩く。その静けさは気味悪くってその後の急展開の前の、嵐の前の静けさのようだった。

伊里野が吐血して倒れた後、浅羽は、伊里野がブラックマンタのパイロットとして敵と戦っていてそのために伊里野の心身に重すぎる負担がかかっていることを確信する。
そして、椎名真由美に言う。

そんなの大人がやれよ!! 中学生の女の子にぜんぶおっかぶせてよく平気でいられるな! あんたらが勝手に始めた戦争だろ!


それを聞いた椎名真由美は浅羽に頭突きをかまし、殴りながらこう答える。

脳グソかっぽじってよく聞きなさいよ、この世にタダの物なんて何一つないの。この戦争はね、あんたがエロ本片手にチンポしごいたりUFO特番見てゲラゲラ笑ったりする時間を稼ぎ続けるための戦争なのよ!


このやりとりでこの小説は深みを増したと思う。資本主義と民主主義を掲げる現代社会の複雑さが国家、軍隊、大人=悪という単純な図式を超えてこの返答に集約されている。


イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 (電撃文庫)
(2002/09)
秋山 瑞人

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そして、逃避行。最初は順調に見えた逃避行だが、二人が心身ともにボロボロになっていくのがひたすらに切ない。ホームレスの吉野が伊里野に暴行する、同時刻に干からびたエロ本でオナニーする浅羽。この対比が浅羽の無力さを感じさせた。

逃避行の最後、以前から度々登場するが屋根の上の榎本がかっこいい。
そのかっこよさの理由が最後の最後にエピローグの中に集約されて出てくる。

命を賭して守るだけの価値がこの世界にはあるのだと心底から信じて、故にそれを伊里野に知らせることを恐れず、その罪をすべて我が身に引き受けて地獄に落ちる覚悟を決めていたのは、榎本だけだったように思うのです。



イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 (電撃文庫)イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 (電撃文庫)
(2003/08)
秋山 瑞人

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私はといえば、榎本のようになりたいと思いつつ、吉野にならないようにするだけで精一杯だったりする。でも、吉野も心に残る脇役だな。

坂道を逃げていく吉野。
屋根の上で空を見上げる榎本。
六番山の上空でマイムマイムを踊るブラックマンタ。
この小説の中の、いくつもの光景が今でも頭の中に浮かんでは消える。

これで「イリヤの空、UFOの夏」の感想は終わり。
この文章をブログに上げればこの4冊の文庫本はやっとこさ本棚にしまわれる。
なんか肩の荷が下りた感じがする。
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